憧れの風切音−音のはなし−
エギングの季節を告げる、シャクリの風切音についてのおはなしです。
ロッドのシャクリ音
「バシュ バシュ バシュ」
鋭く小気味良い音が堤防に鳴り響く。
振り向いた僕の視線の先で、背中にギャフを背負った軽装のエギンガーが淡々とシャクリを入れ直す。波の音に混ざる風切音が、僕の心を焦がした。
「シュン シュン」
思い切りロッドを振った僕の耳に届くのは、気の抜けた軽い音だけだ。
この違いは何だろうと、僕は自問する。
ロッドの軽さ?硬さ?それとも腕力なんだろうか?
「バシュッ バシュッ バシュ」 「ドシュッ ドシュ ドシュ」 「ビシュッ」
鳥が囀りを競うかのように、居並ぶエギンガーが次々と小気味良い音を立てる。
僕が…あんな音を出せるのはいつだろうか…。
◆シャクリ音が出ない(聞こえない)
下手な描写はさておき、上手そうな人が出しているシャクリ音が出せず、シャクリが下手なんだろうか?と自問される方もいると思います。
結論から先に述べますと、物理的に、周囲の人にとっては喧しいほどのシャクリ音も自分には聞こえません。
◆シャクリ音の原理
棒を振ると、どのような時に大きな音が出るでしょうか。
高速で、振り幅が大きい方が大きな音が出ます。
ロッドを振ったとき、先端ほど高速で振り幅も大きいため、シャクリ音は先端付近から出ていると考えられます。
では、先端付近で発生したシャクリ音はどのように周囲に広がるか。
全方向に均等に広がるのではありません。空気を切り裂いて生じる音は、ロッドを振る方向ではなく、ロッドに対して垂直の方向に、より強く広がっていきます。
管理人は、物理に嫌われていたので難しい説明は出来ませんが、風呂場で棒を振って水面にぶつけたら、波は手元ではなく、主に横に広がるのと同じ原理だと想像しています。
このように、先端から発生して横方向に広がるシャクリ音は、ロッドを振る本人には聞こえにくく、周囲にはよく聞こえることになります。
本人に大音量でシャクリ音が聞こえるなら、可及的かつ速やかにシャクリのスタイルを変えてください。住宅地にある港なら、騒音でエギング禁止になります。
◆シャクリ音と釣果の関係
シャクリ音が大きいアクションがなくても、釣る人は釣っています。シャクリ音の大きいアクションと釣果が比例するものではありません。
もちろん、ハードアクションをスパイスにしたり、組み立ての中心にするスタイルや、ハードアクションの方が反応が良い時があると考えられますが、音を出すことを目的とするのは本末転倒にように思えます。
シャクリ音を出したい方に、(比較的)安全なハードアクション
◆ハードアクションのリスク
ハードアクションはロッドの破損と表裏一体の関係にあります。
特に、ラインスラックを取ってのハードアクションは、ロッドに対して継続的に強度の負荷を加えるため、強度の弱い軽量ロッド等だと折れる原因になります。「スラックを取ってのバイオレンスジャークにはバイオレンスな悲しみが待っている」と、バイオレンスジャークの使い手である
下邨宏高さんも述べています。
また、ロッドは大丈夫でもラインブレイクの危険が高くなります。PEのわずかな傷、コブ等による強度の低下をハードアクションによる負荷は見逃さずブレイクに至ります。
もちろん、ロッドの強度が十分で、テクニックもあれば、スラックを取ってのバイオレンスジャークも可能です。
◆お勧めのアクション
無難なのはロッドにもラインにも負荷をかけにくいアクションです。
お勧めはバイオレンススラックジャークです。相当のラインスラックを出して思い切りロッドを振って、ロッドが最も振られた瞬間にラインが張る程度が理想的。これならロッドにもラインにも、あまり負荷がかかりません。
管理人は、軽量ロッドのヌーボーカラマレッティーでバイオレンススラックジャークをすることがありますが、まだ、折れていません。
ただし、自分の体より後方までロッドを振るのは折れる恐れが高くなりますし、絶対に折れないわけではありませんので、各自の判断でお願いします。
◆最後に
説明が物理学的に間違っていたらお詫びします。トップページにある「ご意見・お問い合わせ」から、詳しい説明とあわせてお知らせください。
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